最近朝鮮事情所感11

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さて今回は朝鮮での商売のことなので、前回のエントリーに書いてもよかったのだけど、長くなるので分割しました。そして日本人にとってはとても耳の痛い内容となりますので、今回の連載の主旨から長めに抜粋します。覚悟して下さい(笑)。

いまや世界の一等国にも並ぶ程の勢いであるのに、その実力の元を作る商業貿易、ことに朝鮮貿易がこの様な有様でドーなるものか。互いに国の大事、先々までのことを考えて、着実な利益を図ることに努めなくてはならない。 

 

たとえば一時日本から甲斐絹を朝鮮が輸入して、大いに朝鮮人の気受けが良く、余程評判をとって居たが、それに付け込んで粗製の品を売りつけたので、たちまち彼らから排斥される羽目になり、今では到底取り返す見込みのない有様で、現に絹綿織物は全く支那人の専売という勢いである。一時に余計な無理儲けをしようとして、かえって永久の大損をかもす、なんとも馬鹿らしい話ではないか。 

 

また越後産の石油も一時は相当に朝鮮は輸入していたが、粗製品を出した上に、狡猾な悪い考えを逞しくした結果、忽ちその評判を落とし、落とし、今ではその影も留めないで、朝鮮の石油といったら全くアメリカ油に圧倒されているという有様である。

(中略)

このほかにも日本の商業家が失敗した話は京城にも釜山にも仁川にも沢山ある。しかし一々書き立てて恥をさらすこともあるまい。一度の失策はのちのちの手本として、これから共々間違いのないように注意して、専ら誠実を旨とし、永久の信用を固くすることに努めなくてはならない。 

 

1人の不都合はその人の損に止まらないで、その事業の発達進歩を妨げ、ひいて永久に国の大損となることを知らなくてはならない。かりにも一時一業を営もうとする者は、その位の事は分かっているであろうが、つまり近欲に走って我と我身を苦しめるのを顧みないからで、その様な者が到底勝利を得よう筈はない。くれぐれも注意こそが肝要である。正直が最上の商客、正直に勉強さえすれば、どんな仕事も出来ない事はない。 

 

イギリス人のコフーンが「凡そ製産品は段々良好になって来るのが当たり前であるのに、日本の産品は次第次第に悪く弱って来る。一体に日本人は商業道徳の観念が乏しく、信用上の事はこれを日本人に望むことは出来ない、この点については支那より劣っている」と言ったそうだ。 実際にそうでなくともこの様に思われては損である。ましてこれが事実であるとすれば尚更のこと、名誉の回復は我商人の大責任と覚悟しなくてはならない。

 

日清戦争後は支那人の勢力が大いに朝鮮の社会からおちて、その代わり日本の勢力が延びたようであるが、しかし裏面に入って見ると、マダ朝鮮人支那商人に対する信用の勢力は中々根が堅いように思われる。 

 

それは支那商人は一般に商業道徳を重んじ、信用取引がよく行われて、一旦約束したことは必ず間違いはないようにする。そこで一般の朝鮮人の安心というものが、非常に支那商人に根堅い勢力を与えているのである。 

 

然るに日本商人は前章で述べたように、商業道徳に欠けて、契約の履行など多くは心に留めず、自分の都合が悪ければ勝手に約束を破っても顧みない者が少なくなく、また少し売れると粗製の安物を出して暴利を占めようとしたり、偽ものを送って誤魔化そうとしたり、また或る商人の如きは税関史の目を欺いて脱税を企てたりなど、不信用と不安心の種を蒔く者が多いから、チョット油断するとスグまた支那商人にやられて仕舞う。 また日本商人が支那商人に対して一歩も十歩も譲っているのは、日本商人は支那商人に比べて協同一致の団結力が非常に乏しい。そこになると支那人は感心で、互いに連絡を保って堅く団結して仕事をする風がある。この点は日本人は大いに学ばねばならず、改良せねばならぬ大事な所である。

(中略)

また支那人は朝鮮内地至る所で行商をしているが、その品物の値段でも決して掛値などしないのみか、いかに辺鄙な山奥でも、皆居留地の本店と同様の値段で売り捌いている。その行商者が自分一己の私利を考えないで、一般の信用を重んじ誠実勉強、互いに連絡をとり、堅く団結している有様は実に感心のほかはない。

(中略)

こういう風に日本人では真似も出来ない有様で、日本の行商は大抵常に失敗勝ちである。さらに日本人で行商を企てるのは大抵落ちぶれた壮士や無頼の輩であるから、彼らは往々にして朝鮮人にヒドイ目に逢わしたり、または狡猾無恥なことをやったりして朝鮮人の感情を害している。これでは日本の信用を傷つけることは免れないのであるからこの辺は十分注意して、一方では相当の取締りをすると同時にまた一方では行商の奨励をしなければならぬ。 

 

先にロシアが跋扈した時代に、行商の危険があるからといって防衛的精神で鶏林奨業団という団体を組織し、公使の認可を経てやっていたが、いたずらに組織が大きいのみで統率者もその人を得ず、せっかく農商務省からは1万円の補助を貰ったが、ついに有名無実に陥り、何ら功を為すことがなかったのは遺憾の至りで、やり方さえよければ有望の仕事であるのに、今にとかく発達しない有様である。

むむむ。

 

最後の二段落はなかなか興味深いことが書かれてますね。落ちぶれた壮士や無頼の輩が行商人になってると。壮士ってのは自由民権運動の活動家ですね。この人たちは大陸浪人になった人も多いらしい。鶏林奨業団というのはあまり記録がないようですが、次のブログで割と詳しく解説されております。

鶏林奨業団(一) | 獄長日記

韓国の英雄(?)の一人、金九は若かりし頃起こした強盗殺人事件について、閔妃殺害の恨みを晴らしたもので、殺したのは土田讓亮という日本の陸軍中尉だと述べています。この軍というのが鶏林奨業団と措定されてるようですが、土田讓亮は鶏林奨業団とは全く関係のない商人です。

鴟河浦事件 - Wikipedia

金九の知られざる姿とは(上) | Chosun Online | 朝鮮日報

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