松岡洋右『東亜全局の動揺』ソ連に対する認識

松岡洋右満洲事変直前に書いた『東亜全局の動揺』という本を読みました。1931年に当時の人に向けて書いたものだから当時常識だったことをこちらは知らないということもあるのでそこは難しかったものの、新な知識を得られたことも多く大変興味深かったです。多くを幣原外交への批判に費やしており、そこは代議士として政敵を口撃するという点から差し引いて考えなくてはいけないかとも思います。

 

『東亜全局の動揺』というだけあってソビエト支那(中国)について書いていることが多いのですが、ソビエトに対してこれだけ厳しい見方をしているというのは、後年日独伊ソの同盟を考えていたというようなことからすると意外な感じもします。彼は親米とも親露とも言われるようでよく分からないところがありますが、とにかく本書ではソ連を警戒してアメリカは今は大丈夫みたいなスタンスで語ってます。

 

その中で初めて知ったのは例えば当時ソ連に対して多くの債権があり、その回収の見込が立っていないこと。ロシア革命以来断絶していた国交を回復したことで、孤立していたロシアに国際的地位を与えてしまったこと、そもそも北洋漁業問題など、彼の見方では国交回復で日本はほとんど何も得ていないことなどを指摘しています。まあ幣原さんの主張などはまた違うのでしょうが。

 

倉山満氏曰く「松岡洋右ソ連のスパイであってほしい」(そうすると彼の行動の説明が付きやすいということ)とまで言われる松岡洋右昭和天皇にも嫌われていたと言われ、左翼はもちろん多くの右翼からすら嫌われる松岡洋右、まだまだ私には謎が多いです。

 

次回は同書で書かれている支那(中国)に対する認識について書こうかなとも思っております。