象徴としての憲法改正

皆さんは安倍総理大臣を支持されてるでしょうか。一応支持率50%ぐらいあるらしいので日本の総理大臣としては高い支持率を得てる人と言える一方、支持してる人も各論是々非々でしょう。

 

安倍政権でも常に経済問題は最優先事項の一つですが、安倍さんだからこそということで期待してるのは拉致問題憲法改正です。両方とも滅茶苦茶大変なのは分かってるし、安倍さんも手を抜いているわけでないことも分かってます。しかしこれだけの長期政権でも未だに実現できるか分からない。

 

一般の多くの人はイデオロギー的なことはどうでもいいのでやはり経済が最優先になるでしょうが、自ら左翼とか保守とか自認してる人たちは何を目標としてるんでしょう。もちろん色々あると思います。保守なら憲法改正拉致問題解決以外にも、マスコミ問題、皇室典範改正、教科書問題、安全保障問題、スパイ防止法等々。

 

数え上げればキリがありませんし質的にも違うのですが、中期的目標として最大公約数となるものは憲法改正ではないでしょうか。もちろん大日本帝国憲法日本国憲法に変わった時のように全体を一気に変えるのは出来ないようなので、どこか一項目変わったところで憲法問題が万事解決するわけではありませんが、それでもやはり戦後レジームの象徴としてそこに手がつけられるというのは大きいんじゃないでしょうか。いずれ立花孝志氏にぶっ壊されず、且つNHKの「その時歴史が動いた」が復活すれば数十年後か数百年後か採り上げてくれることでしょう。

 

保守活動をしてる私の知り合いも、その活動内容は様々で、慰安婦問題に熱心な人、戦没者遺骨収集に熱心な人、拉致問題、教科書問題、原発問題などメジャーどころ以外にも、例えば国学神道の研究、漢文素読寺子屋的な教育、ライトな和文化普及等々等、所謂保守でも興味ない人は全然ないだろうことまで結構様々。同じ人でも活動の中心が変わることもある。それはそれぞれ自分がやれることやりたいこと得意なこと興味を持てることをやるのがいいと思います。

 

突然ですが、今の香港デモは前回と違い、リーダーのいないデモだそうで、そのせいで鎮圧が難しいところもある一方、デモ側も統率が取れないことによるマイナス面もあるようです。私は逃亡犯条例が撤回されても運動は続けるべきだと思いますが、香港の民主主義を守るための選挙制度改革を一つの目標にするなどを前に提案しました。

香港デモ隊への提言 - 王蟲の子供*1

 

先にも書いたように憲法改正されたところで問題が解決されるわけではない。香港も「真の普通選挙」が実現したところで、将来的に大陸に併呑される恐れがなくなるわけではない。しかし当面の大きな目標というものを目指してやると効率的と言うか戦略的なんじゃないでしょうか。

*1:

ちなみに2017年、香港で「普通選挙」を実現する法案が否決されました。これは民主派の反対で否決されたのですが、なんで民主派が普通選挙に反対なのか意味分かんないですよね。まあこれは民主派からすれば立候補者が制限される「偽の普通選挙」ということになります。これは雨傘革命の契機となった事案です。つまり当然ながら雨傘革命と今回の大規模デモは様々な点で連続性があります。

香港「普通選挙」白紙に 17年長官選、議会が政府案否決 :日本経済新聞
2014年香港反政府デモ - Wikipedia

 

最近の杉田水脈議員の問題をご存知ですか?

知らなかったでしょ?

mainichi.jp

最近あまり見かけなかった気もしますが、活動家のような精力的動きを続ける杉田氏に対し、以前から執拗な誹謗中傷は見られました。今回もその一つだろうと思うんですが。

 

「威力業務妨害など犯罪を助長する危険な行為」と識者は指摘する。

 とのことですが、法的な問題などは素人の私には少なくとも無料部分の情報ではよく分かりません。つまり私もよく分からないことが多いのですが、私の知る限りこの件がバズってるのははてな界隈のみ。はてぶで批判してる人たち、有料部分の記事ちゃんと読んでんすか?それでも批判することはありえますし、私も今後の展開によっては杉田氏批判をするのに吝かではありませんが、どうですかねー。

 

他のプラットフォームでバズってないものをはてなだけでバズってるとしたら、はてな界隈に誰か仕掛け人みたいのがいるんじゃないかという疑いも、長年の一はてなユーザーとしては、排除できないと考えております。だってこれ300以上のブクマ付くような記事ですか?

 

はてサが、上記の記事に集まるのは自然なことなのか、あるいは組織的に扇動する人がいるのか、確証はありませんが、正直私は後者を疑っておるということです。

 

現在ネットで書き込みをする人は保守系が優勢に見えます。これは私の見るものの偏りは差し引かなくてはなりませんが、You Tubeなどでもリベラル系動画よりも断然アクセス多いんじゃないですか?にも関わらず、はてなでリベラル、左翼どころか反日的発言をする人が多いというのは、私はある種組織的な動きを疑っています。以前に比べはてなに於ける彼らの占有率は減ってる気はします。これも私の希望的観測が入ってますので分かりませんが。

 

今回は杉田水脈さんの件を題材にしてもらいましたが、以前から思ってた(前にも書いてたかもしれませんが)はてな利用者に対する不審感を表明させていただきました。

GSOMIA破棄の驚き

韓国がGSOMIAの破棄を発表しました。

news.yahoo.co.jp

 

少し前に渡しは流石にそれはしないだろうと書いたので思いっきり外してしまいましたね。

韓国人にとってのGSOMIA - 王蟲の子供

 

情報分野での実質的なデメリットはないという人もいますが、それ以上に韓国のプライドのための破棄でしょうか。それでも破棄はしないと思ってたので、もうこうなったら何でもありですね。

 

そうなると心配はこのスピード感に日本は対処しきれるのか。どうせプライドの問題で実質的影響はないと見る人もいますが、北朝鮮が実際喜んでるのを見るとそれは甘い考えな気もします。もう何でもありですので、多くの識者の見立てが当たるのか注目ではありますが、外れても仕方ないんじゃない?ってぐらい滅茶苦茶ですよね。

 

スピード感という点では例えば半島有事が起こり難民が発生した時、どう対処するのか決まってるんでしょうか。きわめて不安です。

 

とにかくムンジェインは想定以上にやばそうですね。「やっぱ破棄しませーん」なんて言われても驚きません。

 

石原莞爾7~マイン・カンプ批判

満州国 ~石原莞爾編~ - 王蟲の子供
石原莞爾2 - 王蟲の子供
石原莞爾3 ~最終戦争への準備期間としての統制~ - 王蟲の子供
石原莞爾4 東亜・大東亜の範囲 - 王蟲の子供
満州国4~石原莞爾の中国観の変遷~(石原莞爾5) - 王蟲の子供
石原莞爾6~昭和維新とアジア主義~ - 王蟲の子供

 

石原莞爾については手軽に手に入る著作に関してはどれも同じようなことを書いていますけども、「マイン・カンプ批判」は題材が特殊で他で言及されてないことも多いので個人的に気になるとこだけメモ。本の内容を纏めるのではなく飽くまで個人的に気になったとこだけなので悪しからず。石原莞爾の思想の概略は今迄書いた分で十分かと思っております。ちなみに旧字体新字体にしてまーす。

 

第二 民族観

(一)ナチスの民族観

「民族」は今日、人類の当面する最も重大な課題の一つである。(中略)我が国の第一の民族問題は朝鮮のそれである。

先にも断った通り気になったとこだけの抜書なので「第一」は飛ばして「第二」から行きます。この後も適当にサクサク飛ばします。さて、本書に於いて朝鮮の民族問題は多く採り上げられているわけではないけども、「重大」と書いてるぐらいですし、朝鮮について書かれてるところは多めに抜書きしようと思います。

民族問題を最も巧みに解決した国は、優勝の地位に上る一つの資格を獲得するわけである。あの鈍重なソヴェートが尨大な戦力を以てドイツに対抗してゐる一因はソ聯の民族政策が相当の成功を収めてゐるに在ると信ずる。(中略)ナチスの民族理念に於ては、血液を根底的なものとなし、極力その血を固定し、変化させないことを理想としてゐるのに対し、マルクス主義及び自由主義の民族理念は、殆ど故意に血の観念を民族から脱落せしめてゐるのである。(中略)最近、日本人は自主的にものを考へることがなく、何かと言ふと他人の真似-殊に強者の真似をしたがる傾向がある。ヒツラーの民族主義が日本人殊に自称日本主義者に強い影響を与へ、盛んに雑婚を排撃し、法律を以て禁止せよという声さへある。又一方満州方面の一部日本人は、民族協和は雑婚よりなどと唱へてゐる。(中略)自由主義は財力や武力によって世界を支配し、マルクス主義は万国の労働者を結合して資本主義を打倒せんがために、何れも故意に血の観念を民族から脱落せしめた。ヒツトラーが奮起した時にはドイツはマルクス主義支配下にあり、ヴェルサイユ条約を屈辱と感じないやうな状況であつた。

ナチスの民族観となってますが、自由主義マルクス主義の民族観と比較しております。そして当時の日本人も両者に影響されてるやつが多いと。では自由主義マルクス主義ナチスの民族観とは何なのかはナチスのハンス・ファブリチウスの「ナチス党綱領解説」、スターリンの「マルクス主義と民族問題」を引用している部分を孫引きしましょう。

自由主義は、民族を以て一定の国家の領域内に居住し、同一の言語と文化を有し、共同の歴史的追憶を有する人類の全体に他ならぬと教へた。国民社会主義はこれに反して民族概念の第一を、そして特徴的な標識を人種即ち共同的血液であると認める。」

(「新独逸国家体系」第一巻)

 

「民族とは言語・領土・経済生活及び文化の共通性として顕現されてゐる伝統的心理等の共通性によつて統一された、人間の歴史的に築かれた永続性ある共通性である。民族はあらゆる歴史的現象と同様に変化の法則によつて支配される。」

(「マルクス主義と民族問題」)

ナチスの民族観は石原莞爾も、科学的にゲルマン民族日本民族も相当に血が混じっていると反論しています。一方、確かに完全に人種のようなものを無視するのも不自然でしょう。しかし後述しますが、石原莞爾は世界一民族を志向しております。

 

(二)日本の民族問題

八紘一宇の民族観は、血は固より民族の主体たることを疑はないが、これと同時に民族は不断に発展し来つた事実を認め、更に民族観の歴史的進展さへも期待する。これが真に王道的理念であると信ずる。換言すればあるがまゝに民族の真の姿を認めようと言ふのである。血の重要性に就いては我々はヒツトラーの意見を尊重するが、同時に民族の発展と言ふ点では、マルクス主義自由主義の主張を是認する。(中略)闘争が盛んであれば必然的に民族意識は昂揚し、平和によって民族意識は沈潜する。今や未曾有の闘争時代である。(中略)従つて今日は民族意識も亦最も旺盛な時代であり、かゝる時代に政治的方便で民族意識を滅却しようとするのは無理である。

 石原莞爾としてはナチスの民族観と自由主義マルクス主義の民族観の誤りを指摘し止揚してるつもりなのかもしれませんが、個人的には「で?」という気持ちがします。石原莞爾の時代と現代で民族問題の切実さが違うからでしょうか。「未曾有の闘争時代」で「民族意識も亦最も旺盛な時代」の空気感は頭では理解できても実感は出来ない。この差は想像以上に大きいのかもしれません。人間の考えることは古今東西それほど変わらないような気もするんですが、時代状況は無視してはいけない。というかそうでないと理解できないですよね。

 

日本民族の使命達成のためとあらば、一億国民喜んで皆身命を捧げる。日本民族に対する我々のこの美しき熱情と八紘一宇の大理想を実現しなければならぬといふ強い意思と、この二つは毫も矛盾なく調和するのであり、絶対に作為がない、方便がない、坦々たる天地自然の歩みを行ふだけである。

石原莞爾は田中智学に傾倒し国柱会の会員でしたので、宗教性が特に強い。日蓮宗は日本の宗教の中では特に拡張的で創価学会が今でも世界中にその輪を拡げようとしていることも同じDNAな気がしますね。疑似一神教とも言われる皇国史観日蓮宗のコラボは中々強烈です。石原莞爾自身は軍部でも異端児であったし、国柱会やその思想がどの程度影響力があったかは分かりませんが、今後も戦前の思想史は追っていこうと思っています。いずれにしても戦前の右派にしてもこのような「世界は一つ」的なのや石原莞爾のいうところの「自称日本主義者」など、色々違いはあったということで。ちなみに国柱会は今も存続しております。

dot.asahi.com

 如何にもAERAらしく伝統的右翼としての国柱会に現在の右翼を批判させてますけど、実際伝統的右翼と今の保守は大分違うと思いますね。確かに思想性が薄い人が多いというか。でも思想性が強い人も、AERAは自分に都合が悪ければそれはそれでカルトだとか批判するだろうけど。ちなみに国柱会日本会議の関係についてこの記事に書いてるのとWikipediaのどっちが正しいんでしょう。どっちでもいいけど。

日本会議には属しておらず、国柱会としての日本会議の活動への動員は行っていないという。署名集めなどの協力要請があれば、ものによっては協力する程度だという。

伝統的右翼がネトウヨを叱る? 宮沢賢治も信じた国柱会は今 (2/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

 

青木理によれば、日本会議との関係についてのAERA編集部による取材・アンケートにおいて、日本会議関連団体である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」代表委員に教団幹部が就任している、としている[1]。

上杉聡によれば、過去に実施された保守系政治団体日本会議のイベントの受付において、国柱会を含む各種宗教団体別の受付窓口が設けられ、参加者を組織動員したことがある[2]。

国柱会 - Wikipedia

閑話休題。続きます。

私は昭和十五年十月十七日、京都で「新体制と東亜聯盟」と題する講演を行つたが、この中で「遠き将来を空想すれば全民族も渾成せられ、全人類が天皇を中心と仰ぎ、一国家一民族となるのを理想とすべきである」(「東亜聯盟」昭和十六年十月号所載)と述べた。これに対し、一部の日本主義者から激しい反対が加へられた。然し、私は断然、私の説の正しいことを信じてゐる。八紘一宇の究極の理想は世界一民族でなければならぬ。固より全人類の血が完全に融合しなければならぬといふのではない。上述した如く、血の区別はあっても、文化の完全な統一によつて生活感情が一つになり、民族の対立意識が失はれ、そのまゝ一つの民族となり得るのである。

 

うーむ、やはりかなり恐ろしいです。石原莞爾以外も戦前の右翼は天皇を戴いている点以外は左翼とほとんど変わらないと感じるのも多くいます。先日NHKで新しい資料が出たと特集してた二・二六事件の理論的指導者とされる北一輝などはその天皇に対する考えすら怪しいようですがそれはまたの機会に。

「二・二六事件」海軍極秘文書発見 収束までの4日間詳細に記録 | NHKニュース

 

 (三)ナチス民族観の批判

我々は誤れる思想信仰に対しては徹底的に闘ふ。然し自ら人種平等を唱へながらユダヤ民族を排斥するのは誤りである。(中略)到る処で虐待され、ひねくれ、悪いこともやって来たユダヤ民族を完全に改心させて、その所を得しめるのが、天皇の大きな御仕事の一であると拝察する次第である。

 ユダヤ民族を「ひねくれ」と表現してしまうとは中々強烈ですねー。戦前には日本でもユダヤ研究はかなりされてたようなのでいずれそういうのも読んでみたい。

次はヒツトラーの所謂「指導民族」の考へである。(中略)我々日本人は「自分達こそ天子様の近衛兵である。世界最優秀の民族にならねばならぬ」との確信を持ち、最大の努力をせねばならぬが、自ら公々然と自分を指導民族であると表明するのは、民族国家対立時代ならばまだよろしいが、国内に異民族を抱擁するに至らば、大なる危機を伴ふ。(中略)朝鮮民族は明治四十三年八月以来、既に立派な皇民である。一時叫ばれた朝鮮の「皇民化運動」は明治天皇の思召に対し奉り誠に不敬と言はねばならぬ。(中略)またナチスの民族理論を鵜呑みにすれば、朝鮮の同化政策は非常な間違ひだといふことになる。(中略)ヒツトラーによれば、朝鮮民族にはなるべく日本語を教へないやうにと言ふことになる。ヒツトラーとしては已むを得ない考へであらうが、我々は違ふ。しかし所謂「同化政策」には深甚な反省を必要とする。民族意識を政治的力を以て抹殺しようとしても不可能である。日鮮両民族が自然の大きな文化現象によって一民族になることは固より希望する所であるが、かゝることに就いての論議は十分に慎重でなければならない。

 最終的に一民族になるまで先頭を切るが反感を買わないように偉そうにしないようにしようってことですか?前も書いたけどやはり傲慢な感じはしますわね。

 

 第三 綱領の研究

(一)ユダヤ排撃

ユダヤ人はドイツではひどくきらはれてゐる。如何となれば、ドイツ人は極く素朴な愚直とも云へる勤労的国民性を有するに対し、ユダヤ人は利に敏く商売人としてうんと儲けるからである。特にインフレの時はひどかった。インフレで一番困るのは俸給取りや恩給生活者で、商人はむしろ巨利を博する機会に恵まれる。ドイツ人は大体月給取の生活をやつてゐるものが多いから、自分達の生活が苦しくなればなるほど、ユダヤ人が憎くてしようがない近頃東亜にも似た姿があらはれて来た。中国に行つてゐる日本人連中がどし/\家族を日本に帰してゐる。今迄高い月給を貰つて得意になつてゐたのが、最近のインフレで動きがとれなくなつたのである。中国人は大抵何かの商売をしてゐるのでインフレには困らず、却つて昨日迄よれ/\の着物を着てゐたものが今日はりゆうとした服装をするやうになり、逆に千円の月給の日本人がだんだん見すぼらしくなつて来た。かうなると、「何だ、支那人はつけあがつてゐる」と憤慨する。これが定石だ。私は、かうして中国に必要のない日本人が帰るのは、事変解決のために大いに結構だと思つてゐる。

 そうだったんですねー。ほんとだ、帰れ帰れ!

 

(三)経済政策

ソ聯革命の指導者は、労働者を煽動し殊に農民に土地を開放して、その圧倒的支持を受けた。ロシヤの地主は日本の地主とは丸で桁が違ふ。(中略)その後あらゆる困難が相次いで起ると、レーニンスターリンもこれを巧に外患に転嫁して、国内の結束を強化したのである。(中略)この大建設の蔭に国民の生活はツアー時代より遙かに悪い状況に追ひやられたのであるが、(中略)とにかくスターリンを指導者と仰ぐやうにさせたのである。この成功は何と言つても、国防国家を目標にした驚異的建設の魅力によるものと信ずる。

今日は人類にあつてこの方、未曾有の大戦争が行はれてゐる。南方の選曲は苛烈になつて来たが、日本はまだ片手で戦つてゐるやうなものだ。これに反し、独ソは全身をぶつけて戦つてゐる。実に人類史上に未だなかつた大格闘である。独ソ戦争は端的に云へば、四年計画と五カ年計画の戦争である。

 確かに死者数を見ると独ソ戦はヤバすぎますしね。ちなみに本書は昭和十九年一月の講演録です。

スターリンは一国社会主義建設と称してカムフラージュしてゐるが、自らは国力の飛躍的増強を計りながら民主主義国家と全体主義国家を喧嘩させ、へと/\になつた時に一挙に世界赤化の決勝戦をやる積りであつたに違ひない。私は地獄でスターリンに聞いて見ようと思つてゐる。

 今でこそ様々な共産主義者の暗躍が暴かれこのような見方もありますけども、当時そのように見ていたのは慧眼と言えるんでしょうかね。

 

(四) 我等の建設方策

 ここでは八紘一宇実現後の社会や、それまでにどのように「建設」して行くか、例えば義務教育をどういう制度にするとか細々と書かれております。

かくの如き国土の変貌に伴ひ、個人の生活も根本的に革新され、人類を生物学的に滅亡させんとする享楽生活は清算されて、真に質実にして剛健、而もこの中に優雅たゞよふ、東洋人的人生観に即した新しき生活が創造されるに至る。(中略)衣服は、もつと本当の意味での新しい型が生まれなければならぬ。(中略)私は婦人の模様物を全部禁じたらよいと主張してゐる。(中略)中国のやうに、子供から老人まで男も女も青一色と言ふのも、すつきりしていゝものである。(中略)国民が上下の別なく、玄米飯に(?)をかけ菜ッ葉汁で家族一同が「旨いなあ」と言つて感謝しながら食事をするやうになれば、昭和維新の卒業期に達したのである。住宅については、家族の数に応じて標準家屋を徹底し、それ以上の家屋には思ひ切つた重税を課すべきだ。(中略)この新生活に伴ひ、世に充満してゐるあらゆる虚偽は自然に払拭され、誠心が恢復するのである。昭和維新の結果は此の如き総合的革新が行はれ、所謂自由主義文明を完全に克服するのである。

なんかやっぱ共産主義っぽくないっすかね。同じ国柱会宮沢賢治の「雨ニモマケズ」のような生き方でしょうか。

 

この後ヒトラーが国内の共産主義者と如何に戦ってきたかなどなかなか面白いですが、まあ今回はヒトラーが主題ではありませんので割愛。しかし好きでやってることとは言え疲れたー。さっさとこういうのはみんな青空文庫に入れてほしいね。

 

香港デモ隊への提言

今後香港がどうなるのかは多くの識者が予測を試みていますが、どれが当たるのか難しいですね。

 

さて中国政府がデモを押さえる場合、どういうシナリオが考えられるのか。一番過激なのは武力鎮圧ですね。デモ隊をテロ呼ばわりし始めたのもその布石とも言えるでしょう。とは言え国際的な非難は避けられず、他の方法があるなら敢えて選ぶ必要はない。

 

雨傘革命の時のように自然な沈静化を待つ策が上策に見えますし最初は実際そうなるんじゃないかと私も思ってました。しかしそうだとしたら白シャツ集団の投入などは香港人の怒りを買うので逆効果ですよね。

 

とすると武力鎮圧の可能性は思ったよりも高いのかもしれません。その場合大きな障害となるのは国際世論ですから、SNSでの拡散等でもどんどんやるのは中共への圧力になるかもしれません。実際現地のデモ参加者が望んでるのはそれのようですし。

 

では両者落とし所はどうするつもりなんでしょうか。中共の勝利はデモ隊の活動を雨傘革命の後ぐらいまで沈静化すれば十分でしょう。デモ隊の勝利は何でしょうか。まず香港政府は逃亡犯条例の審議を引き伸ばすことによって沈静化させようとしたわけですが、これではデモ隊は納得しませんでした。

 

ではデモ隊はどうすれば満足なのか。中共と比べると勝利条件が曖昧な気がします。審議延期では承諾できなかった。では逃亡犯条例の完全廃案でいいんでしょうか?これでもやはり香港の中国本土化を食い止めるには時間稼ぎにしかならないでしょう。

 

これはエッチくんの案なのですが、どの状況になればデモ隊を解散するのか明確に発表するといいんじゃないでしょうか。香港独立という主張は、デモに参加した人たちの中でも多数派とは言えないようで、現実的ではない。例えば選挙に中共に都合の良い人しか出られない現在の擬民主主義選挙制度を変えて一般的な選挙制度の実現を落とし所にするとか。もちろんこれを中共が飲むかは別問題ですが、デモ隊の運動方針にも、海外から応援してる人にも目的が明確化するのは良いですよね。

 

今回は基本的にデモ隊と北京政府だけをプレイヤーとして論じましたが、中共が言うような米英による陰謀というのはなくとも、トランプは米中協議に香港問題の解決を絡めようとしてるようです。今回の主題とは離れますが、やはり重要なプレイヤーなので気になりますね。

 

www.excite.co.jp

東條英機は何故支那よりの撤兵拒否に拘ったのか

開戦前の日米交渉について、いつか纏めてみたいとは思っているのですが、比較的有名なところで、いまいち理解出来ていないことがありました。日米交渉に於いて支那よりの撤兵を頑として拒否していたことです。なぜそこまで?と思っていたのですが、今読んでいる本でその点について少し明確になった気がしたのでメモとして書きます。

 

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これは「東条英機「わが無念」―獄中手記・日米開戦の真実」に書かれてることです。ちょっとタイプするのが面倒なので写真で失礼。いずれにしても内容としては支那事変は排日侮日居留民への迫害が原因であって、その原因が除去されない以上、撤兵しても同じことが繰り返され根本的解決とはならないということでしょう。

 

今までは、軍国主義者(?)がこれまでに散華した英霊に申し訳ないみたいな主張をしたという感情論しかほとんど見たことがなかったので、それよりは合理的な主張を見ることが出来ました。改めてWikipediaを見るとこのようなことも書かれていました。

東條率いる陸軍はかねてから中国からの撤兵という要求を頑としてはねつけており陸相時の東條は「撤兵問題は心臓だ。米国の主張にそのまま服したら支那事変の成果を壊滅するものだ。満州国をも危うくする。さらに朝鮮統治も危うくなる。支那事変は数十万人の戦死者、これに数倍する遺家族、数十万の負傷者、数百万の軍隊と一億国民が戦場や内地で苦しんでいる」「駐兵は心臓である。(略)譲歩、譲歩、譲歩を加え、そのうえにこの基本をなす心臓まで譲る必要がありますか。これまで譲り、それが外交とは何か、降伏です」「支那に対して無賠償、非併合を声明しているのだから、せめて駐兵くらいは当然のことだ」とまで述べていた。

東條英機 - Wikipedia

 しかしやはり上記の本の記述が一番すっきり分かりやすい気がしました。例えばWikipediaで引用したものは謂わばトリミングされてるのに対し、獄中日記に関しては自分なりに系統だって記述したものですし。いすれにしても東條英機が撤兵問題にそこまで拘っていたのが個人的にイマイチ分からなかったところに一番得心させられました。もちろんそれでも撤兵すべきだったという考えはありだと思いますが。

 

ライバル的に採り上げられることの多い石原莞爾には講演録などが多く残されているのに対し、東條英機の言葉として残っているのはこの獄中記や東京裁判での証言ぐらいしかなく、知名度の割にどういう人なのか分からないところが多いので(もちろん東條英機に関する本は多く、その中に東條英機の発言は多く書かれてはいますがやはりトリミングされたものだし、本当に言ったのか証拠もないものも多く、著者の東條英機への評価により偏りがある感が拭えない)、東條英機が自殺に失敗し、獄中記や裁判での証言が記録されたことは貴重な記録となったと思います。

 

知ってる人も多かったのかもしれないし、あまり大した内容ではなかったかもしれませんが、個人的にずっとモヤモヤしてた問題なので取り急ぎメモ代わりとして。

 

今日は終戦記念日でしたね。拙句を一つ。

何事もな曰ひそ終戦

香港デモ隊への謝罪

香港でデモをしてる方たちに謝りたいと思います。もちろん私はずっと反中共ですから、香港の活動家を支持してきましたが、雨傘革命の挫折や、これまでに私が会った香港人たちの話などを勘案し、やはり最終的には中共に呑み込まれる運命なんだろうと悲観しておりました。しかし、今回このような粘り強い長期に渡る抗議活動を見て、もっと応援したい気持ちが俄然湧いてまいりました。

 

香港では情報戦が激化し陰謀論的なものも多く出ています。推測は出来るもののハッキリと証拠をつきつけてこうだと言えることはなかなかないですね。有名なとこだ人民解放軍が既に現地入りしてるとか、警察がデモ隊に紛れ込んでるとか、暴徒化したデモ隊は自作自演だとか。確認出来るのもあるかもしれませんが、数が多すぎてチェックしてられません。

 

中共が盛んに宣伝してるのは、デモ隊を英米が支援してる、つまりデモ隊は英米の傀儡という説。例えばこんな写真が。

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香港市民には同情的でもこのような外国勢力の介入は許せないという中国人もいます。工作だとしたらとても単純な工作だけど意外と効果あるんですよね。

 

ところで中国では軍事費よりも治安維持費の方が掛かってると聞いたことがないでしょうか。ではそんなに大陸でも香港のようなデモが起こってるのかというとそれは違うのです。大陸でのデモは退役兵の待遇改善とか、立ち退き料の交渉とか、個人的な利益のためのデモであり、反政府運動のようなものではありません。ウイグルとかであるのかは知りませんが。その点、香港の今回のデモはかなり性質が異なります。そこで中共としてはこのような香港型デモが大陸に波及しないように躍起になっているようです。

 

いずれにしましてもわたくし今回香港市民の意気に打たれ勇気をもらった気がします。香港加油