石原莞爾2

さてさて「最近朝鮮事情」についてのシリーズが終わりましたところで、中断してた満州国関係のシリーズを続けたいと思ったのですが、満州国で括るのはちょっと保留して石原莞爾について書きたいと思います。

 

満州国 ~石原莞爾編~ - 王蟲の子供
満州国2 ~満州人脈編~ - 王蟲の子供
満州国3 大東亜共栄圏と左翼の思想的類似性 - 王蟲の子供

 

では今回は彼の思想について、もう一度振り返ります。石原莞爾は当然戦争が専門であり、ヨーロッパの戦史を詳しく研究し、彼なりの理論を形成します。ではこの図を見て下さい。

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彼はそれぞれの時代の戦争を持久戦争、決戦戦争と分け、指揮単位、政治体制などと関係づけて考察し、これまでの戦争の発達の必然の結果として、将来的に最終戦争が起こり、世界は戦争のない時代に至ると予想しました。

 

これって何かの論の進め方によく似てませんでしょうか。マルクス主義ですね。マルクス原始共産制から、奴隷制封建制、資本主義、社会主義共産主義へと至ると予想したわけです。

 

石原莞爾は全くマルクス主義者ではありませんが(実際しばしばマルクス主義との違いを述べている。)随所にこのような影響が見られます。これは石原だけでなく、当時の多くの知識人が陥りがちな思考法だったんじゃないでしょうか。石原莞爾は当時から異端児だったようですが、それにしてもやはり彼の著作は当時を知る上でも非常に興味深いです。

 

一方彼はアジア主義者という一面を持っています。アジア主義というのも人により大分違い、偉そうに○○主義と名乗れるものか怪しい気もしますが、ざっくり言えば岡倉天心の言う「アジアは一つ」みたいなもんでしょうか。石原は満州事変の首謀者ということから、現中国政府の立場からは日本軍国主義の結晶のように見られるかもしれませんが、やり方はともかく東亜が一体となって欧米と対決するという思想の持ち主ですね(支那事変不拡大派ですし)。王道対覇道という大アジア主義の概念は孫文の大アジア主義講演によく表れています。まあこの講演がどの程度重要なのかよく分かりませんが。

孫文の大アジア主義

 

石原莞爾は精緻な研究に基づく理論を構築するとともに、日蓮宗系の国柱会の信者でもあり、その思想が混在してることがありますが、彼の中では矛盾なく処理されてる模様。彼は世界は今後東亜、アメリカ園、ヨーロッパ圏、ソビエト圏に分かれるとし、これはそれぞれの圏が地域的に近いということも必然性として説かれています。しかし彼の東亜への期待は何なんでしょうね。アメリカとの最終戦争というのが、まず結論としてあり、そのために東亜がまとまるべきという順番に見えますがどうだろう。この最終戦争が日米間で起こるという予想に関しては傲慢だったと戦後反省の弁を述べています。

 

そもそも軍国主義者というのは基本レッテル貼りなので、軍国自体を最終目標としてる人などいるんでしょうかね。戦争は手段でしょう。いるのかな?知らんけど。当時の日本軍には多く宗教の熱心な信者が多く、石原莞爾についても彼の書いたものを見ても、私は全く彼の思想に共感しませんが、彼が理想主義者であったのであろうことはよく見て取れます。

 

アジア主義者の一面として、例えば辛亥革命が起こった時、「…万歳を叫んで新しい中国の前途に心から喜びを示したものである」(「満州建国前夜の心境」昭和十七年)と述べています。よく知られる東條との確執により予備役に回されますが、昭和14年に東亜連盟を結成し、各地で活動を続けます。東亜連盟には中国人朝鮮人も多く参加し、来る最終戦争へ備えるための活動をします。まあこの活動自体は大した影響力はなかったと思うんですが、戦後GHQに解散させられています。

 

 石原莞爾の場合はこの東亜は天皇を中心にまとまるべきものなので、東亜連邦ではなくとりあえず東亜連盟を目指すとなったようですが、それでも日本ではこの「王道」ってのが「皇道」じゃないのかって批判があったとかなんとか。

 

今でも東亜連盟と検索すると石原の道を受け継ぐと称する空手団体が出てきますね。怪しいものですが、それはともかく曹寧柱や大山倍達のような朝鮮人空手家も東亜連盟に参加してたとか。ほんとか分かりませんが、病床の石原を酒田法廷にリヤカーで引っ張っていったのはこの人たちという話もあります。まあこれぐらいの嘘は平気で言うやつも多いので怪しいと思ってますが、いずれにしても中国朝鮮人にも一定のシンパがいたようですね。汪兆銘が中国東亜連盟総会を作ったのに日本の新聞はニュースにしないのは不思議だと言っています。マスコミってやつは今も昔もって感じですね。

 

うーん、全然書き飽き足りませんね。思想に共感してないと言いつつ、その魅力には惹き込まれてるのかもしれません。

 

石原莞爾3 ~最終戦争への準備期間としての「統制」と指導原理~ - 王蟲の子供