中国漁船に乗ってる人って誰?

インターネットフォーラムで、アメリカ人が「日中で緊張関係があると聞いたが本当ですか」って質問があったので、私は「そりゃそうですよ」的なことを答えたのですが、「そんなこと聞いたことない」って答えた日本人がいるんですが、本気なんですかね。もちろん英語のニュアンスで私が取り違えてるのかもしれないけど、日中関係に問題がないと考えてる人って思ったよりも多いのかも?中国が好きじゃないって人も、観光客のマナーなどを問題にしてるのであって、尖閣諸島の問題とか2010年の漁船衝突事件みたいな派手なことがない限り、どれだけ尖閣諸島周辺に中国船がうろついて、海警が対応に追われてるかとか認識してない人が多いのかも。

 

尖閣周辺に50日連続で中国公船 菅官房長官「極めて遺憾」(産経新聞) - Yahoo!ニュース

 

ところで中国の場合「公船」も軍艦並みの武装をしているということもありますが、漁船にも軍人が乗ってることがあるみたいなことも聞くので少し調べました。ほんのちょとね。

 

分かりやすいとこだけピックアップします。赤字は私がしましたよ。

中国語でいう「民兵(Min-Bing、ミンビン)」と日本語でイメージする「民兵(Min-Pei、みんぺい)」、また英語でいう「Militia」がそれぞれ意味する内容は必ずしも一致していない。

(中略)

   民兵の中でも、本稿の主題である海上民兵について、中国海軍も彼らが、「兵と民との二つの身分を併せ持つ存在であり、(中略)海洋権益防護のために行動し、軍事的プレゼンスを強化するとともに、対立の強度や敏感度をコントロールし、有事の際には真っ先に使用するとともに全過程において用いられる」軍事力であると期待している6

(中略)

   したがって、中国の国内法で定められた「民兵」は、一般的な日本人がイメージする「民兵」とは全くの別物であり、中国の正規軍(彼らは「国軍」ではなく「党軍」だと言う)の一部であることを忘れてはならない。

(中略)

ここで国際社会が懸念しているのは、これまで挙げてきた海上民兵の他国へのハラスメントや攻撃が、一般の漁船や漁民と区別のつかない状態で行われていることにある。さらに、そうした非戦闘員か否かの識別の難しい彼らが、海軍や法執行機関の艦船よりもさらに前線において活動しているというところにある。こうした活動はかつての「便衣兵」を想起させるものであり、無辜の漁民達をも巻き添えにしかねないリスクを伴っている。

(中略)

 

   上記のような人道を無視した軍事力(ミンビン)の用法は、我々からすれば現行国際法に対する挑戦とも見えなくもないが、平時のビジネスルールですら軽視する中国にとっては、有事における国際法などそもそも眼中にないのかもしれない

(中略)

   一方、私利私欲に基づく中国の不法漁民たちに起因する国際社会との摩擦や紛争は、相手国のみならず、中国政府にとっても予期できない、双方にとって不測の事態となりうる危険性をはらんでいる。ある意味で最も不確実で予測困難な虞を有するものである。

トピックス088 | 海上自衛隊幹部学校

中国の民兵は、一般の民兵と違い正規軍の一部であるということ。とは言え政府がコントロールできる民兵と、不測の事態を用意に引き起こしかねない民兵がいる。

  しかし実際の海上民兵はそのようなものではない。端的に言えば、海上民兵は漁民や港湾労働者等海事関係者そのものであり、彼らの大半は中国の沿岸部で生活している普通のおじさんやお兄さんたちである。「海上民兵が漁民を装う」というのは大きな誤解であり、漁船に乗った「海上民兵は漁民そのもの」である。さらに付け加えると、海上民兵はれっきとした中華人民共和国の正規軍人であり素性の怪しい戦闘集団というのも大きな間違いである。

(中略)

   海上民兵の実態を理解した上で見落としてはならないことがある。確かに漁船に乗って活動する海上民兵は、中国の一般的な漁民そのものである。ただし、ここで誤解してはならないのが、漁民といっても彼らは我々の身近な漁師さんたち日本の漁業従事者のイメージとは程遠いということである。人間はややもすると自分達の常識や尺度・価値観に基づいて異なる社会を捉えがちである。しかしそれは大きな誤解を招く元である。

 

   筆者は在勤中、海南省福建省遼寧省山東省はじめ中国の沿岸部を訪ねた際、漁船や漁民と間近に接する機会があった。目にするモノのみが真実というわけではないが、どの地方の漁民もそれほど大きな差異はなく、また彼ら自身も一般的、平均的な地方の中国人と何ら違いはなかった。ここで譬える平均的な地方の中国人とは、平均的な日本人とは異なる社会常識や価値観を持つ人々のことである。

 

 中国国内、特に都市化の進んでいない地域では、中国自身が「最大の発展途上国」と認めるように、衣食住が足りて法と秩序に安穏とした生活には程遠い地域が多い。そのため生活や権利が脅かされたと感じた場合、彼らのパワー(人数や装備)が地方政府や警察等のパワーを上回ったと見るや、彼らは躊躇することなく、公権力に抵抗し、それらを圧倒することが時折起きる。その際、彼らが手にする武器も我々が想像するものとはやや異なっている。水滸伝」や「三国志演義」に出てくるような刃物を振り回したり、手の届く距離の相手の顔面に向けレンガを投げつけるような激しく派手な喧嘩が、北京を含む大都市ですら、ごく自然に周囲を気にすることなく起きている。筆者も幾度か目にしたことがある。

 

   中国漁民の多くにとって、海洋は何者からも邪魔されない生活の全てである。海上に引かれた観念上、概念上の線や区画など彼らの目には映らない。ましてや他国の領海や排他的経済水域、漁業規制などは他人事である。官憲による厳格な取締り、或いは自分たちと異なる集団によって物理的に操業ができない限り、自由に操業する権利があるものと信じている。国内の取り決めや国際約束を順守し法と秩序に基づく生活が長期的な繁栄につながると考える人々とは異なる考えの持ち主である。中国政府等の漁民に対する認識も筆者のそれと大きく離れていないようである。

コラム056 | 海上自衛隊幹部学校

端的に言えば民兵のおじさんたちは中国の普通のおじさんたちである。でも彼らは日本の普通のおじさんとは違い、刃物を振り回したり、顔にレンガを投げつけてくる人たちだ。

 

なかなか理解しづらいですが、書いてあるようにかつての便衣兵のような厄介さがあるようです。さすが自衛隊幹部学校、良い分析だと思うのですが、これに対してどう対処すべきかについてはさして見るべきほどのことも書いてないとこを見ると、この先日本がこの問題にどう対処していくのか、先が思いやられますね。