沖縄県の翁長雄志知事に対する政府・自民党の冷遇ぶりが目立っている。翁長氏は6~8日、新年度予算の要請などで上京したが、関係閣僚との面会や自民党の会合への出席は実現しなかった。米軍普天間飛行場の移設問題で国に反対する翁長氏。政府との蜜月を誇った前知事への対応との違いに沖縄で反発の声が上がる。

 8日、東京・永田町自民党本部で沖縄関連の予算を議論する会議が開かれた。仲井真弘多・前知事時代には、知事や県職員が顔を出したが、今回出席を望んだ翁長氏は招かれなかった。

 ある党幹部は「呼ばないのは仲井真知事じゃないから」と話す。会議では「今後、県の要望は自民党県連を通して受ける」との発言も出た。

 7日は、特産のサトウキビの交付金に関連して西川公也農林水産相に面会を求めたが、会えなかった。面会が認められたのは、同席する予定だった農協幹部だけ。翁長氏は県東京事務所で待機を続けた。

 沖縄県選出の自民党国会議員は「翁長知事には政府とのパイプがないことが示せればいい」と狙いを明かす。別の県連幹部は「普天間問題で政策が異なる知事の要請を受ける理由はない」と言う。

 前任の仲井真氏は陳情などの際、政権や自民党幹部と直接日程を調整していた。安倍政権は今年度予算で概算要求を上回る3501億円を計上し、沖縄振興予算は2021年度まで3千億円台を約束。仲井真氏は13年末、振興策を評価し、普天間移設のための名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。

 翁長氏は昨年11月の知事選で辺野古移設阻止を掲げ、仲井真氏らを破って初当選。同12月に就任あいさつで永田町を回った際も菅義偉官房長官らに会えず、閣僚との会談は山口俊一沖縄北方相だけだった。菅氏は「年内に会うつもりはない」とまで言い切った。

 今回の上京で翁長氏が出席したのは、8日の全国知事会議だけ。翁長氏は会議後、政府や自民党の対応について「昨年の知事選や衆院選などを受けてのことだろう。あるがままを県民や本土の方がご覧になって考えていただければいいのではないか」と語った。

 沖縄では反発の声があがる。普天間飛行場がある宜野湾市の主婦(44)は8日、友人と電話で翁長氏の上京を話題にした。「あまりに露骨。沖縄の民意を政権や自民党はどう思っているのだろうか」

 沖縄の平和団体「沖縄平和運動センター」の山城博治議長は「嫌がらせ以外の何ものでもない。政権や自民党は『沖縄に寄り添う』と言いながら世論に耳を傾けようとしない。知事はめげないでほしい」と話した。(相原亮、上地一姫、泗水康信)